with チージィポッシュ（菓子研究家・福田里香さん）
お菓子とワインの組み合わせの楽しさは11月の「岸本恵理子」さんの回でもお伝えしました。また、チーズとワインの相性の良さは、6月の「サンデーフロマージュ」の回でもお伝えしたとおり。
そして今回、ワインのお供にお届けしたのは、チーズのクッキーです。製作は、富山の洋菓子メーカーのZAXFOX、パッケージデザインはクリエイティブスタジオKIGI。
味も缶も中の紙カップやリーフレットも、隅々まで魅力的なクッキー缶について、ディレクションされた菓子研究家の福田里香さんにお話を伺いました。
鈴木「入荷待ちなほど大人気のチージィポッシュ。みんなが食べてみたい！と話題にしているこのお菓子をお届けできるなんて、とてもラッキーでした」
福田「だんだんと生産体制が整ってきて、たくさんの数をお届けできるようになってきたんですよ。このクッキーはワインにも合わせたいなと考えたものなので、鈴木さんに食べてみてほしくて」
鈴木「食べてみたら、里香さんの愛情と、スーパーロジカルなところが表現されていると感じました。というのも里香さんのお話って、ただ自分の熱を伝えるのではなく、どうしてこの味にしたか、どんな人たちに向けてこういうものを作ったのか、という説明がとてもわかりやすいんです。聞いた人みんなが納得する感じが、チージィポッシュからも伝わってきました」
福田「商品の企画って、そういうロジックを考えるのも楽しいんですよね。せっかくだから、ちゃんと売れるようにしたいし」
鈴木「チージィポッシュはペコリーノロマーノDOPを使っていて、2タイプの味わいがあるというのも、とっても論理的ですよね」
福田「チーズはいろいろ試したけれど、みんなで試食会をしたら、ペコリーノロマーノを使ったものが満場一致で人気だったんです。その生地の厚みを変えることで、チーズのフレッシュな香りが楽しめるタイプと、芯までしっかり焼き込んで、チーズの旨味と香ばしさを感じるタイプとの、2タイプの味わいが楽しめるようにしました」
鈴木「同じ生地なのに、味わいががらりと変わるんですよね。そこにまたレモン風味のメレンゲがアクセントになって、ずっと食べ続けちゃう（笑）」
福田「鈴木さんにワインに合うとお墨付きをもらえてほっとしました」
鈴木「里香さんとのお付き合いも、ワインを通じてでしたね」
福田「そう、鈴木さんの著書でもお話させていただきましたが、数年前、『なぜかワインがおいしいビストロの絶品レシピ』という本の仕事を通じて、アタッシェドゥプレスの鈴木さんとして知り合いました。その後、インスタグラムで繋がってみたら、鈴木さんのフィードはワインのことばかり。これはきっと副業でワインの代理店かなにかをしているに違いない、と思っていたんです」
鈴木「当時は、まだワインの販売をすることになるとは思いもせず、ただ単に好きがすぎる飲み手でした（笑）」
福田「だってフランスに女1人で渡って、パリでもなく地方の造り手を訪ねてるなんてすごいことですよ。あの熱意はプロでしかないと思いました」
鈴木「私は、自分が好きなワインを造っている人の人となりやフィロソフィーを知りたくて、造り手に会いに行っているんです。だから人間関係を築くために、やっぱり言葉が必要で、特に2年ほど頻繁に日仏を行き来しながらフランス語を勉強しました」
福田「なんに関しても、自分の身体を使わないと知ったことにならない、と思うんです。鈴木さんはそれを体現していて、こんな女の子が出てきたんだなあと感慨深かったですね」
鈴木「いやほんと、当時は体当たりでしたね。今は、『あのときジュンコは赤ちゃんみたいなフランス語だった』って造り手に言われます（笑）」
福田「あるとき、手土産にワインを持って行く機会があって、ここはプロに相談しようと鈴木さんに連絡したら、ワインの販売はしていないって言われて。でもなにがいいか、とても丁寧に相談にのってくれました。そのときから、鈴木さんはこれを仕事にすればいいのに、って言ってましたね」
鈴木「里香さんは、どんな人にどんなシチュエーションでさしあげたいか、ということをいろいろ教えてくれるから、考えるのが楽しくて」
福田「ワイン屋さんはたくさんあるけれど、選び方もわからないし、ワイン好きにもいろいろなタイプがいるじゃないですか。それもやっぱり相性があるなと思っていて。鈴木さんのインスタグラムを見ていて、作る料理もおいしそうだし、写真もきれいだし、ワインを魅力的に感じたんです。鈴木さんのおすすめが私の好みと合ってるってことなんでしょうね」
鈴木「私が伝えたいのは、ワインだけではなく、“ワインがある風景や時間の豊かさ”だから、それが里香さんにわかってもらえていると思うと、本当にうれしいです」
福田「チージィポッシュもそういう時間のお供にしてもらいたいなと」
鈴木「お届けしたのは12月。ここはやっぱり華やかなシャンパーニュを入れたいなと思っていたんです。シャンパーニュとデザートの組み合わせっていいですよね。シャンパーニュって世界一、ブランディングに成功した土地なんです。そのなかでナチュラルに造っている若手生産者、レミ・ルロワのものをセレクトしました」
鈴木「チージィポッシュのイメージともつながる、黄色が効いたエチケットのワインは、ラ・グラップリのもの。植物学者から転職してヴィニュロンになったルノー・ゲティエが造っています。根菜のクリーム煮とか、冬っぽいこっくりとした料理にも合うんですよ」
鈴木「そしてもう１本は、クリスチャン・ビネールのスペシャルなキュヴェ。お姉さんの名前、ベアトリスと名付けたところからも、スペシャル感が伝わってくるかと。アルザスの名門なだけあって、スペースと体制があるから、落ち着くまで寝かせてからリリースしてくれる。年末の大切な時間にぴったりの味わいだと思います」
Edit & Text by Shiori Fujii
