2022-01-25

今月のワインセット 2021/10

今回、bulbulのワインに合わせてきのこのミートソースやくるみの醤油がけを用意してくれたのは、eatripを主宰する野村友里さん。ワインと畑が好きという共通項によって仲良くなったという二人の会話をお届けします。

鈴木 「bulbulを始めるときから、友里さんにはワインのお供になるおつまみをいつかお願いしたいと話していました。始めて半年経って、ようやくお願いできるチャンスがやってきました」

野村 「私が忙しくて、なかなかタイミングが合わなかったのだけど、やっとできましたね」

鈴木 「胡桃醤油は、みなさまから『手が止まらない!』って声をいただいています(笑)。お酒のアテもなるし、サラダとかに砕いてのせたり、お料理にも使えるのがいいですよね。そして、ミートキノコソースはbulbulで先行発売! 嬉しいです」

野村 「ミートキノコソースは、大分〈湯布院きのこ村〉の椎茸と鹿児島〈ふくどめ小牧場〉の幸福豚のひき肉を使用して、シンプルに素材の良さを活かして仕上げたもの。きのこ村の佐藤聖二さんから提案されて、私の母が作るミートソースにもきのこが入っていたので、絶対においしい組み合わせだと思ったんです。それで〈eatrip restaurant〉のシェフが作った試作品もすごくおいしかった。だけどいざ商品化となると、各家庭で温めなおしたときにおいしいように、というような検証に時間がかかってしまって」

鈴木 「料理人である友里さんは、こういう便利なものを使ったことがあんまりなかったんですよね」

野村 「こういうパックをお湯に入れて湯煎すればいいなんてことも知らなくて。でもそれができたらすごくラクなんだよね。世の中には、働いているお母さんとか忙しい人ってたくさんいて、そういう人たちにも喜んでもらえると思ったの」

鈴木 「それで試食しながら塩加減の調整をしたり。少し塩が控えめかもしれないけれど、使う人がアレンジできるし、ベストな味がやっと決まった」

野村 「肉や魚と合わせればメイン料理もすぐにできるし、誰かのおうちに遊びに行くときは、これとワインだけ持って行けばいい」

鈴木 「どんな食材にも合わせられるから、すごく便利! 最初はパスタや焼いたお肉にかけるなら、シラーが合うなと思っていたんです。でも友里さんに『かぼちゃとか、グリルした野菜にもよく合うよ』って言われてから、野菜にも合うんだ!って新鮮で。ワインと野菜をソースが繋いでくれる感じが、すごくいいなと思う」

野村 「じゃあ、ワインセットにはシラーが入っているのかな」

鈴木 「ローヌ地方のスパイシーでやわらかなシラー、ダール・エ・リボの「クローズ・エルミタージュ・ルージュ」と、ピノグリの80%を7日間マセラシオンしたオレンジワインで、bulbul エクスクルーシブワイン「H2O Saudade」。そしてロゼのように飲める、タンニンが少なくてチャーミングなドイツのヴァイングート・マン「ロートリヒ」というワインを基本の3本セットにしました」

野村 「根菜などの野菜には、ロゼっぽいワインも合うのね」

鈴木 「そうなんです。ハーブっぽい味わいのワインは根菜によく合う。同じソースでも野菜を変えるだけで、違うマリアージュが楽しめるのもいいですよね」

野村 「そういうことを考えるのは楽しそう。私は、リースリングが好き、ジュラも好きとか、それなりに好みはあるけれど、ワインに詳しいわけじゃないんです」

鈴木 「でも〈eatrip restaurant〉は、最初から自然派ワインを出していましたよね」

野村 「カリフォルニアで自然派ワインを作っている〈Scribe Winery〉の人たちと友だちという縁もあったので。当時、日本で扱っていたのはうちくらいだったんです。ワインを選んでくれていたのは、当時のシェフの白石くんなんだけど」

鈴木 「詳しくなくても、やっぱり料理人だから目利きができるんじゃないかな」

野村 「それはある程度ネ。イギリスで料理学校に通っていたときも、ブラインドとかはよくできてた。でも今は詳しい人が周りにたくさんいるから、自分で詳しくなくてもいいんです。この人が好きっていう生産者と出会ったら自然と覚えるし、背景を聞いて選ぶのが好き」

鈴木 「家でも一人でよく飲みますか?」

野村 「最近は、食前酒とか食後酒とかが好きなの。キッチンのなかにスツールを持ち込んで、甘いワインを飲んだりしてると、ああ、幸せーって思う。ワインがなかったら紹興酒を飲んだり」

鈴木 「いいですねぇ。ワインがあると、時間の流れが変わる気がしますよね」

野村 「〈Chez Panisse〉(※世界にオーガニック革命を起こしたと言われるアリス・ウォータースが営むカリフォルニアのレストラン)で働いてたときに、女の人が会社帰りとかにふらっと来て、本を読みながらワインとコースを食べているのを見るのがすごく好きだったの。話しかけないけど、『そういうあなたが好き』って光線を発してたと思う(笑)」

鈴木 「きっと伝わってた(笑)」

野村 「そういう、自分の時間を持っている人がすごく好きなんです。ワインとかアルコールって、スイッチを切り替えてくれるものじゃない? こんがらがっている気持ちをふわってさせてくれる。だから、みんなで飲むワインも好きだけど、一人で飲むのも好き」

鈴木 「〈eatrip soil〉の屋上庭園で飲むのもいいですよね」

野村 「外で飲むワインはまた格別ですよね。以前、生産者を訪れたとき、ワインが育った環境のなかで飲むと、ワインってやっぱり農産物なんだなって感じられた。それがすごくうれしくて。〈Scribe Winery〉の友人も、ワインを輸出して届けるのもいいけれど、本当はソノマの畑に来て飲んでもらいたいって思ってる」

鈴木 「以前、〈Scribe Winery〉でごはんを出すイベントもしていましたよね。すごく楽しそうだった」

野村 「昔は高級なレストランとかで飲ませてもらうことも多かったけれど、その記憶よりも、外で飲むワインのおいしさのほうがずっと印象的だった。もう知ってしまったら戻れない(笑)」

鈴木 「それはフランスでも同じ。どんなにお金持ちだったとしても、ピクニックしたり、家でアペロを楽しんだりしてる。フランス人って、お金をつかわないでも人生を楽しむ天才だと思うなあ。bulbulでは、そういう楽しみ方も合わせて伝えて行きたいなと思っています」

Edit & Text by Shiori Fujii

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